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在宅介護「代わりがいない」彼らに迫りくる限界 コロナ禍で負担激増、感染リスクにも怯える

“家庭の問題”として閉じ込めてきた矛盾が、コロナ禍で一気に噴出してきている

高齢者や障がい者らを家庭で介護する人(ケアラー)が新型コロナウイルスに感染した場合、誰が高齢者らの面倒をみるのか。ただでさえ苦労を余儀なくされているそうした家庭が、足元を大きく揺さぶられている。

介護時間 1日5.7時間も増加

「コロナの感染拡大以降、介護の時間は1日平均で5.7時間も増えています。介護によるストレスや身体的負担も増えている。マスクなどの衛生資材も足りていません。そんな状況で、介護する側の自分が感染したらどうなるのでしょうか?」

一般社団法人日本ケアラー連盟の代表理事・児玉真美さんはそう訴えた。介護施設の休業が増えて今までのような利用ができなくなったり、臨時休校で障害のある子どもがずっと家にいたり……。そうした結果、介護の時間が急増しているのだという。

話の元になっているのは、同連盟が自宅で介護をしている人を対象に実施したインターネット調査(3月21〜30日、回答者381人)の結果である。

「ケアに要する時間に変化はありましたか」の問いには、141人(37%)が「長くなった」と答えた。その増えた時間の1日平均が5.7時間なのだ。1日の4分の1に相当する長さである。普通に利用できていた通所施設が閉鎖になるなどして、家庭での負担が増したため、と思われる。

その結果、何が起きているのか。回答には次のような“肉声”が並んでいる。その一部を示そう。

日本ケアラー連盟代表理事の児玉真美さん。取材は電話で行われた(写真:児玉真美さん提供)

・ショートステイやデイサービスが利用できず、要介護者が家にいるので、自分自身のことや家事ができなくなった
・介助の時間が日中ずっとなので、食べているヒマがない。食べなかったり、家事をやりながらパンをかじったりしています
・母がデイサービスへ行かれずストレスが溜まり、いろいろと用事を作る。例えば、ティッシュを細かくちぎって花吹雪にする。大声で「おやつくれー」と叫んだり、杖でバンバン床を叩いたり、「なんかおくれ~」と杖で私を小突いたり
・ケアの負担が増えたため、買い物に行く体力がない。買い物に行くには重度障害児を連れて行かなければならない。買い物に行くにも感染の不安がある
・買い物自体行けない。ケアを代わってもらう人がいなく、外出さえできない

もうこれだけで、日々の暮らしは崖っぷち、と映る。

調査では、「あなた自身が新型コロナウイルスに感染した場合、代替案を考えていますか」という核心に迫る問いもあった(複数回答)。これについては、回答者381人のうち、「まだ考えていない・どうしたらよいのかわからない」が200人、「代わりの人はいない」が195人に達している。

介護する側が感染した場合、介護を受けている人も家族も濃厚接触者となる可能性が高い。そうした不安は回答にも現れている。

自分が感染したら? 「わからない」が多数派

・(自分が感染したら)当然家族も濃厚接触者になるので誰にも預けられないし、我が子の場合、命に関わります
・子どもが発達障害もあって、大変すぎるから別の人に任せられない!親子共倒れ覚悟!
・子どもは人工呼吸器の重度重複で、他に見られる人がいない
・家族に感染者がいたらショートステイは利用できない。主な介護者が感染者となったらケアする人がいなくなるので、命の危険がある
・姉と2人で介護しているので、姉にすべてをお願いするしかない
・結局同居の家族に代わっても、みんなが感染してしまったらどうなるか不安
・介護施設は利用できないと思うので身内で対応していくしかない。

考えると恐ろしいです

日本ケアラー連盟の調査結果(撮影:フロントラインプレス)

そもそも平時でさえ在宅介護には大変なことが多い。しかも、細かな事情は家庭ごとに異なる。そうした肉声を“家庭の問題”として閉じ込めてきた矛盾が、コロナ禍で一気に噴出してきたとも言える。

日本ケアラー連盟の児玉さんは言う。

「介護というのは、やっぱり家族のプライベートな問題だから、『家族で何とかしろ』と(いう風潮がある)。根深いと思います。ケアラーが置かれている状況や課題をもっと可視化しなければ、と思います。コロナ問題で最も急ぐことは、ケアラー自身が感染し隔離された場合、それに代わる人がいない。受け皿がないので、整備する必要があります」

介護する側(ケアラー)や要介護者が感染した場合、行政はどう対応するのか。例えば、東京都世田谷区の担当者はこう話す。

「地域包括支援センターやケアマネジャーと相談しながら、最適な方法でやらせていただく。保健所で『要介護者が濃厚接触者』と言われたら、もちろん要介護者は施設に居られません。その時は、1人ご自宅で観察期間を過ごせるようにします。介護事業所と調整しながら、ヘルパーが様子を見に行くとか」

厚生労働省老健局振興課の担当者は「自治体がサービスの主体となりますので、自治体と事業所、地域の保健所、ケアマネジャーの方が、迅速な連携を」と言う。

いずれにしても、最後の頼りは各家庭に足を運ぶ介護福祉士や訪問介護員などになる。これに対し、介護従事者の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」の村上久美子・副事務局長はこう指摘する。

UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの村上久美子さん(撮影:フロントラインプレス)

「いつも(最後は)事業所で責任を持ってやれ、となる。それでは困るんです。今は『コロナに感染するから仕事に入りたくない』というヘルパーさんが増えています。小学校の子どもがいる方とか。一方では、担当している利用者(要介護者)さんを看る人がいなくなるので、『休みたくても休めない』と言ってるヘルパーさんもすごく多い」

介護業界はもともと人手不足だ。そこにコロナ問題が起き、今の現場は「行政が考える以上に深刻です」と村上さんは言う。

「介護は、唾液に触れる食事のケアや排泄のケアといった感染リスクが高い現場です。衛生用品も足りない。そんななか、対応は事業所に任せっきりです。特に訪問介護の場合、1日に数件も家庭を周るため、感染したり、させてしまったりするかもしれない。恐怖と戦いながらの仕事です。介護は『最後の砦(とりで)』と言われますが、それなら、せめて国から(特別な)手当くらい出してほしい。『現場を見てください』です。最後の最後に(責任だけ)回ってくるんですよ」

「専用の避難所を」と専門家

在宅で介護を受けていた人が最悪の状況に陥らないために、現実的な対応策はあるのだろうか。介護福祉士やケアマネジャーの資格を持つ淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は「専用の避難所を作ったほうがいい」と考えている。

「対象は『要支援』や『要介護度1』の人に限られますが、まずは在宅介護から取り残された人用に、ホテルの貸し切りしかないでしょう。そこに一定の身の回りのお世話をする介護職員を置いてもいい。介護の度合いが高い『要介護度3〜5』の人は老人保健施設や病院を確保すべきです」

淑徳大学の結城康博教授(撮影:フロントラインプレス)

「平時だったら、老人保健施設やショートステイに入ることが原則です。しかし、今はそうした施設側も新規には受け入れたくない。感染の拡大になりかねないからです。このままでは、もうどうしようもなくなる。だったら、ここは国や自治体が資金を出して、いま言ったような避難所を整備するしかありません」

介護に携わる人たちの痛切すぎる肉声

要介護者の健康をどう守るか、ケアラーたちの生活をどう維持するのか。ここで再び日本ケアラー連盟の調査に寄せられた“肉声”の一部を紹介しよう。実は、連盟がまとめた資料は41ページもある。下の内容は文字通り、「一部」でしかない。しかも調査時期は3月下旬。状況はさらに厳しくなっているはずだ。

・ケアラーが(コロナに)かかった場合の対応策が、ケアマネ含め誰も考えてくれない
・ケアラーの罹患でも、重度障害児自身の罹患でも、重度障害児の受け入れ先の対応が未定
・家族と分担介護+ヘルパー利用だが、誰かが欠けるとワンオペになり生活が破綻する
・(要介護者と自分の)どちらが感染してもどうなるのか不安。おそらく共倒れになるのではと思ってしまう
・自身がコロナになったとき全介護の子供はどうする?
・自分が感染した場合、入院できなければ自宅待機になるが、祖母にうつったら致命的なので、その間自宅以外で自分を隔離できる場所がない
・保健所も結局、「お母さんがコロナになったら自分で娘の預け先を探せ」と言った。相談できても、いつものことだが何にもしない、解決にはならず甚だ遺憾だ

取材=フロントラインプレス(Frontline Press)


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