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「東京転居で結婚できた」女性の運命の出会い 「30代・キャリア志向」がネックにならない

それぞれ過去の恋愛に悔いと悲しみがあるからこそ…

それぞれ過去の恋愛に悔いと悲しみがあるからこそ…(イラスト:堀江篤史)

私事だが、35歳のときに再婚して今月で丸5年が経過した。住んでいるのは愛知県蒲郡市。豊橋駅で新幹線から在来線に乗り換えて10分ほど、低い山と三河湾に囲まれた島っぽい雰囲気の地方都市である。

トヨタ関連企業の大きな拠点がないこともあって、住民の入れ替わりは少ない。良くも悪くも流動性が低く、まったりとした空気が流れている。

匿名性も低い。外食店やスーパーで知り合いと顔を合わせることが異常に多いのだ。夜は真っ暗になり、大半の人がそれぞれの家庭で過ごす。10代20代のうちだったら世間が狭すぎて息苦しい気がするが、筆者のような「晩婚さん」が穏やかに暮らすにはちょうどいい場所だと感じている。

東京は「独身&晩婚の天国」?

取材や打ち合わせで月に10日ほどは東京に滞在している。独身時代に長く住んでいた杉並区の西荻窪駅前を訪れることも多い。通勤ラッシュ時でもないのに真っすぐ歩けないほど大勢の人がいる。蒲郡ならば花火の日以外は考えられない人波だ。新しい店もどんどんできている。なじみの飲食店の店主によれば、常連客の入れ替わりも少なくないらしい。人数の多さ以上に、出入りの激しさが東京の特徴なのだと改めて思う。

東京には高学歴・高収入の独身者が多いことも地方都市とは違うと感じる。30歳を過ぎてもなんだか「キャピキャピ」している。周囲に独身者が多くて夜も明るいので焦燥感や孤独感を覚えにくい、地方出身者の場合は遠く離れた実家からのプレッシャーはかかりにくい、そもそも家庭生活よりも仕事や遊びを重視したいので東京に住んでいる、などの理由が考えられるだろう。

エネルギッシュな独身者が無数にいて、しかも流動性が高い大都会。婚活しても友人知人と出くわしてしまう危険性は低い。地方在住者からすれば、東京は「独身&晩婚の天国」と見えるかもしれない。

「30過ぎで大学院卒の私が、田舎で結婚相手を見つけるのは無理だと思いました。東京に出てきてよかったです。30代で独身の高学歴女性が多いので、気が楽になりました」

ここは中央区の月島にある川沿いの蕎麦(そば)店。夫の英樹さん(仮名、32)と一緒に来てくれたのは、都内の医療機関で働いている伊藤綾子さん(仮名、37)。黒いブラウスに金色のアクセサリーがよく似合う細身の美人だ。3年前に関西地方から上京し、婚活サイトに入会。英樹さんのほうからアプローチがあり、翌月には結婚を前提とした交際を始めた。その年末に2人は入籍を果たす。

綾子さんはモテないタイプではない。関西の地元にいた頃も3人の男性と真剣な交際をした。それぞれA、B、Cさんとして、恋愛と破局とを簡単に振り返ってもらおう。

ショックを引きずって、恋愛のやり方も忘れてしまった

「Aさんとは学生時代の同級生です。7年間も付き合っていて結婚する話になり、お互いに親にあいさつしたのですが、うちの親は反対でした。Aさんには1度浮気をされたことがあり、私がショックで激やせしてしまったことを親は知っていたからです。結局、Aさん自体が結婚をしぶりはじめたので別れました。26歳のときです。それでもやっぱりショックで、30歳ぐらいまで引きずっていましたね。恋愛のやり方も忘れてしまっていました」

20代のうちに結婚したい人にとって、学校の同級生と会社の同期は「結婚相手の2大リソース」と言えるだろう。そのうちの1人と長く付き合った末に別れてしまった場合、受けるダメージは小さくない。綾子さんがようやく次の恋人を見つけたのは31歳のときだった。

出会いは合コンだった。6歳年上のBさんは勢いのある営業マン。積極的にアプローチをしてくれた。しかし、半年後には振られてしまう。綾子さんが仕事に関係する分野で大学院に通うことを決めたあたりから関係がギクシャクした。

「後から共通の知り合いから聞いたところでは、私が大卒であることにも高卒の彼は引け目を感じていたそうです。結婚したら女の人には家庭を守ってほしいと思っていたようで、大学院に行くなどはとんでもないことでした」

進学先の大学院でも5歳下のクラスメートのCさんと恋人になった。しかし、結婚を急ぐ綾子さんを受け止めきれなかった彼からは振られてしまう。

そんな綾子さんにとって、33歳での上京は吉と出た。キャリアと経済の面では、綾子さんが学んできた分野でトップクラスの医療機関に職を得ることができた。「30代独身、大学院卒」の経歴が目立つこともない。東京には友人知人が少ないため、綾子さんは思い切って婚活サイトに登録。そこでアプローチをしてくれたのが5歳下の英樹さんである。

「歳が離れているけれどいいのかな、申し訳ないな、と最初は思いました。でも、同じく関西出身なので親近感が湧いて、会ってみることにしたんです」

このインタビューには英樹さんも同席してくれている。綾子さんと筆者が話している間、のんびりした表情で蕎麦前を食べる英樹さん。なんというか犬っぽいかわいらしさがある男性だ。穏やかな結婚生活を求める綾子さんにはぴったりのパートナーだったのだろう。しかも、彼には「男気」があった。

「最初に会った日の帰り道に『付き合ってくれませんか』と言われたんです。とりあえず保留にしましたが、次に会ったときにまた聞かれました。私が『結婚を真剣に考えてくれるならいいよ』と答えると、『僕もまじめに結婚を考えようと思っていた』と。その4カ月後に一緒に帰省したときも、うちの親に『結婚します』とあいさつしてくれました。おかげで両親は大喜びです」

綾子さんと英樹さんの実家は関西地方の中でも近くにある。そして、お互いが相手の両親に気に入られた。綾子さんは大きな安心感を覚えたことだろう。

英樹さんはなぜ綾子さんに熱烈なアプローチをしたのだろうか。日本酒好きだという彼に、筆者の出身地である埼玉県の銘酒を勧めながら本音を聞き出そう。

恋愛には「素朴な憧憬」も必要

「僕はキレイで頼りがいのある大人の女性が好きなんです。妹がいるのでお兄ちゃんキャラを求められがちでしたが、実際の僕は頼りがいのある人間ではありません」

淡々とした口調で謙遜する英樹さん。綾子さんと同じ婚活サイトに登録する前、7年間付き合った女性と別れた過去がある。

「僕と同い年の人で、一緒に上京して同棲をしていたのですが、ささいなことでケンカをしてしまって別れたんです。彼女が帰宅する時間がわからなかったので夕食を作らないでのんびり待っていたら、お腹をすかせて帰って来た彼女にしかられてカチンときた、程度の話です。地元から離れさせてまで同棲をして、30歳まで引っ張った揚げ句に別れてしまいました。罪悪感が募りましたね。次に付き合った人とは必ず結婚しようと決めました」

なお、英樹さんのいう「キレイで頼りがいのある大人の女性」の要素は顔立ちやファッションセンス、立ち居振る舞い、学歴、職歴だけではない。彼は年齢と身長も重視するのだ。英樹さんは自分よりも年上で身長165センチ以上を条件にして検索し、婚活サイトで綾子さんと巡り合うことができた。いつも見上げていたい――。小学生が近所の女子中学生のお姉さんにあこがれるような感覚である。

ちょっとアホらしく見えるかもしれないが、同じく男性の筆者としては共感してしまう。恋愛感情には素朴な憧憬も必要なのだ。「自分にないものを持っている人」に強く心引かれるのは、一緒にいることで自分を補完しようという本能が働くのかもしれない。ちなみに筆者は、「目鼻立ちがはっきりしていて、手足が長く、実務能力に優れ、義理人情に厚く、自意識は高くない女性」をすごく好きになる傾向がある。

自分があこがれを感じ、相手に求める「条件」。できるだけ一般的でないほうが戦略として優れている。需要が少ないところを独占的に攻めることができるからだ。普通の日本人男性は、いろんな意味で「自分より上」の女性を恋愛や結婚相手に選んだりはしない。見上げるような存在をパートナーにすると萎縮してしまうからだろう。英樹さんには「自分は頼りがいのある人間ではない」と言い切る強さがあり、綾子さんを探し当てることができた。彼女の高い学歴と職歴とを英樹さんはむしろ心強く思っている。

お互いの長所を認め合えるということ

あこがれの異性と一緒に住んだとしても、人の性格や価値観は大きくは変わらない。結婚後も英樹さんは相変わらずマイペースである。エンジニアとして働いていた土木関係の会社は辞めてしまい、インタビューしたときは求職中だった。技術職なので転職に自信があるのかもしれないが、「頼りがいのある旦那さん」を希望する女性が配偶者だったら結婚してすぐに失業するなどは考えられない。といって、英樹さんは主夫にもなれない。家事も綾子さんが指示しないかぎりは積極的にはやらないのだ。一方で、ゴミの分別にはうるさかったり、風呂掃除を始めると1時間も没頭していたりする。

「やらないときは全然やらないけれど、やるときは徹底的にやりたい。変なところにこだわりがある人なんです」

綾子さんはちょっとあきれぎみだ。イライラして「1時間も何しているの!」と怒ることもある。しかし、2人は決定的に衝突したりはしない。綾子さんに余裕と達観があるからだと筆者は思う。

「家事はほとんど私がやっているので大変ですよ。料理だって一人暮らしのときみたいに適当にはできなくなりました。でも、家にしゃべり相手がいるっていいですね。仕事でイライラしても、帰宅してガッツリと家事をやっていると気持ちの切り替えができるようになりました」

子どもに関しては、「できるに越したことはないが、2人のままで生活するのもあり」という考えで一致している。いまのところ不妊治療は受けていない。

賢くて鋭敏な綾子さんと、のんびり屋だけど男気はある英樹さん。それぞれ過去の恋愛に悔いと悲しみがある。その分だけ謙虚になれた。だからこそ、お互いの長所を認め合えたのだと思う。ちょっとしたケンカをしながらも、綾子さんと英樹さんは温かな家庭を保っていくに違いない。


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