2015年8月、事実上解禁となった「遠隔診療」が徐々に広がっている。スマホやPCのテレビ電話で医師の診察を受けられるメリットを最も受けられるのは、多忙なビジネスパーソン。通院の負担や待ち時間が“ゼロ”になり、精神疾患、禁煙、高血圧、糖尿病などの治療には向いている。最新事情3をリポートする――。
※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年1月2日号)の特集「医者の診断のウラ側」の記事を再編集したものです。
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2016年11月、首相官邸で開催された未来投資会議で安倍晋三首相はこう語った。
「医療では、データ分析によって個々人の状態に応じた予防や治療が可能になります。ビッグデータや人工知能を最大限活用し、『予防・健康管理』や『遠隔診療』を進め、質の高い医療を実現していきます」
遠隔診療を導入する新六本木クリニックの来田誠院長。予約時間に合わせて回線が繋がり、診療が始まる。処方する薬の説明などは画面上にテキストで表示され、医師は主に電子カルテを用いているため診療はペーパーレス化されている。
首相の言及により、「遠隔診療」が今、注目を集めている。
そもそも遠隔診療とは、パソコンやタブレット、スマートフォンを利用し、通院せずにテレビ電話で受けられる診療のこと。患者としては、通院の負担が軽減する望ましい医療に見える。医師で、遠隔診療のシステムを提供するメドレーの豊田剛一郎代表はこう解説する。
「遠隔診療は、海外ではテレメディシン(tele-medicine)と呼ばれています。日本では『遠隔』と翻訳されてしまうので、どうしても離島や僻地、年齢などの理由で通院できない人向けとイメージされがちです。テレビ電話での診療は、患者さんの通院の負担を下げますから、糖尿病、高血圧、精神科などの慢性疾患の方の受診率や通院率の上昇、重症化の予防も期待できます。また、仕事で病院に通えない人も空いた時間にスマホで受診できますし、子育て中の家庭でも、小児科や婦人科にかかりやすくなる。世代年代を問わず、メリットは大きいんです」
長く遠隔診療は、医師法第20条の「患者との対面診療を原則とする」という趣旨に則り、医療関係者の間で「原則禁止」と考えられ、積極的には行われてこなかった。しかし、昨年8月に厚労省が各都道府県知事に示した通知で、遠隔診療は医師法に抵触せず必要以上に狭く解釈しなくてよい、という方針が示されたのだ。その通知は、医療の現場では遠隔診療の「事実上の解禁」として受け止められた。
医療の現場も敏感に反応した。港区にある新六本木クリニック。来田誠院長が今年1月に開院したクリニックで、精神科を専門としている。
診察室に備えられているのはデスクと椅子、診察台、最低限の医療器具と薬剤棚のみ。来田院長のデスクの上には、デスクトップパソコンが1台置いてあるだけ。オンラインで予約をし、オンラインで診療、処方薬を配送する――まさに「遠隔診療」を実践しているクリニックだ。
来田院長はこう語る。「精神科ではうつ病や不安障害など、来院を途中で止めたり、服薬を止めてしまって症状を悪化させる方が多い。通院の負担が直接病状に影響するんです。遠隔診療であれば、通院の負担を軽くすることができます。もちろん、対面が求められる治療も多いですが、遠隔のメリットは大きい」。
メリットを特に受けるのは、普段仕事で時間がとれないビジネスパーソンだ。実際に新六本木クリニックで遠隔診療を受ける患者の年代は、「20~40代のビジネスパーソンが多いですね。昼休みや仕事終わりの時間帯に受診することが多い。テレビ電話の画面の向こうに職場やオフィス街の様子が映っていることもあります」(来田氏)という。
遠隔診療のメリットが歴然と表れたのが、禁煙治療だ。禁煙治療は12週間で5回(新六本木クリニックでは8週間で4回)の診療がプログラムとして組まれている。厚労省の調査によると、およそ5割の患者が通院を継続できずに「脱落」してしまう。
しかし、新六本木クリニックでは、82%の患者が、4回目の診療まで「完走」している。通院は辛いけど、遠隔診療ならば続けられるかも――動機づけの面でも、利点はある。
このようなオンライン診療の予約、診療、薬の処方、ビデオチャット機能、さらにスケジュール管理などにはプラットフォーム、専用のアプリなどの開発が求められる。「解禁」後、遠隔診療事業には複数のベンチャー企業が参入し、独自のサービスを提供している。
その1つ、メディプラットが運営するのが、「first call」。
「遠隔診療での展開も見据えながら、現在はオンラインでの医療相談を行っている」と語るのは、メディプラット代表の林光洋氏だ。
「first callには、複数科目の医師が40名ほど登録しています。勤務医や開業医と契約し、患者とマッチングして医療相談を行っています。相談は15分のテレビ電話と、初回無料のテキスト相談。最近は1日数百件の相談があり、まずは体験者を増やすことを優先しながら、利用料金と医師への報酬というビジネス面も含め、最適な方法を模索しています」(林氏)
メディプラットで働く眼科医の眞鍋歩氏は、もともと大学病院勤務だったが、今年2月、都内のクリニックで遠隔診療の実証実験をはじめた。
「通院に至る前に相談ができる医療相談をしています。相談を受けるなかで患者さんがいろいろな悩みを抱えていることがわかってきました。テキストでは口頭よりも詳細な説明ができますし、テレビ相談は15分あるので、丁寧に会話できる側面もあります。病院では、待ち時間が長いのに診察の時間が数分だけという経験をされる方も多い。オンラインのほうがむしろ、きちんと患者さんと向き合った診療ができる面があると実感しています」
もちろん、遠隔診療には課題もある。前出のメドレー豊田代表は、最大の障壁は「診療報酬」にあるという。
「遠隔診療の診療報酬については法律や制度が整えられていないのが現状です。今はクリニックが遠隔診療を行っても、得られる報酬が低い。遠隔診療に興味を示す医師は多いのですが、診療報酬の面で尻込みしてしまう。ただ、安倍首相肝いりの未来投資会議でも、平成30年度の診療報酬改定で診療報酬について対面診療と同じ程度まで引き上げるという提言がなされていますし、将来的には解決されることを期待しています」
薬の処方の問題もある。院内処方の薬の場合、医療機関から送付する形になり、患者は送料を負担することになる。一方で、やや面倒なのが院外処方。つまり処方箋が出される場合だ。
「処方箋が薬局に送られ、そこから処方薬が届くならば便利ですが、薬の処方には薬剤師による対面での服薬指導が法律で義務づけられています。つまり、薬局から郵送してはもらえない。院外処方では医療機関から郵送された処方箋を、患者さんが持って薬局に行くことになるので、受け取りまで時間がかかり、手間は解消されません。精神疾患など慢性的な病気では、服薬を続けることが大切なので、処方の手間が改善できればいいのですが」(来田氏)
課題があるとはいえ、遠隔診療は、「患者にも医師にも『選択肢』を増やしてくれる」(豊田氏)もの。患者が医療や医療機関、医師を選ぶ幅がますます広がっていくのは間違いない。「賢い患者」になることが、より求められていくだろう。
●メリット
診察:病院に並ぶ必要がなく、オフィス・家庭でも受診可能。
薬:処方箋もしくは薬が直接届く。
検査:不必要な検査を受ける必要がなくなる。
●デメリット
診察:初診は直接受診しなければならない。
薬:処方箋には期限があるため、確実に受け取る必要がある。
検査:検査を受けることができない。
※取材をもとに編集部作成
▼遠隔診療と相性のいい病気・治療
一般内科:高血圧、糖尿病、禁煙
精神科:うつ病、双極性障害
耳鼻科:花粉症、睡眠時無呼吸症候群
皮膚科:アトピー性皮膚炎、AGA
泌尿器科:ED、前立腺肥大
婦人科:ピルの処方
小児科:喘息、重症心身障害、発達障害、自閉症
整形外科:骨粗しょう症、慢性
※取材をもとに編集部作成
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