家庭内で子どもが受けた性的虐待の被害は、児童相談所が対応したとして公表された数の1.2倍に上ると推計されるとした分析結果を、厚生労働省の研究班がまとめました。
18歳未満の子どもが、保護者などから虐待を受けたとして児童相談所が対応した件数は、2019年度、全国で19万件余りに上り、過去最多を更新しました。
このうち、家庭内で起きた性的虐待はおよそ2600件と、件数全体の1.3%で、被害の潜在化が指摘されています。
このため、厚生労働省の研究班は昨年度、全国の児童相談所と自治体を対象に調査を行い、児童相談所124か所、市区町村492か所から回答を得ました。
それによりますと、児童相談所が把握した性的虐待449件を調べた結果、当初は殴るなどの暴行を受けた「身体的虐待」や、子どもの非行問題などとして相談を受けたあとで被害が明らかになったのは83件、率にして19%に上りました。
この中には、統計上は当初の相談内容で計上され、性的虐待の件数に含まれていないケースも少なくありませんでした。
こうしたことから研究班が詳しく分析した結果、家庭内で子どもが受けた性的虐待の被害は、児童相談所が対応したとして公表された数の1.2倍に上ると推計されるとしています。
また、被害が明らかになったのは、虐待をした保護者などと引き離したり、子どもと信頼関係を築くことができたりした時に、子どもが相談員などに被害を打ち明けたケースが多いということです。
虐待を受けている子どもの年齢が高くなるにつれて、自宅に帰るのを嫌がるなどの傾向が見られましたが、0歳から5歳の子どものケースでは、そうした兆候が確認できない傾向があり、被害の把握がより難しいとしています。
研究班のメンバーとして調査にあたった産業技術総合研究所・人工知能研究センターの坂本次郎さんは「まだ明らかになっていない家庭内での性的虐待の被害は相当数あると考えられる。子どもが被害に遭ったとき、それが権利を侵害する行為であると正しく認識して、SOSを出していいと思うことができるような、教育的なアプローチのほか、周囲の大人が子どもの異変を察知して、適切な支援につなぐため知識を身につけたり、体制を整備したりすることが重要だ」と話しています。