人工妊娠中絶するための飲み薬について、英国の製薬会社ラインファーマは22日、厚生労働省に製造販売の承認申請をしたと発表しました。
承認されれば、国内初の人工妊娠中絶薬となります。世界保健機関(WHO)は、ガイドラインの中で飲み薬を「安全で効果的な中絶法」のひとつとして推奨。80以上の国・地域で承認されています。
日本の中絶件数は年間15万件程ですが、選択肢は外科的処置のみです。 一つはWHO(世界保健機関)が推奨する吸引法。そして、もう一つが金属の器具を使う“掻把(そうは)法”です。
掻把法とは、金属の器具で子宮内から胎児と胎盤を除去する手術法です。国内では広くこの方法が取られています。しかし、掻把法はどうしても事故があります。子宮に穴を開けたり、傷付ける恐れがあり、WHOも安全性に劣ると指摘しています。費用も約10万円と高額です。
一方で、22日に承認申請された“飲む中絶薬”の原価の平均価格は770円です。現在、80を超える国で使われています。
今回の飲む中絶薬は、丸い錠剤タイプとなります。
国内の飲む中絶薬の治験には、妊娠9週までの18~45歳の中絶を希望する女性120人が参加しました。妊娠を続けるために必要な黄体ホルモンのはたらきを抑える薬「ミフェプリストン」を1錠服用。2日後に子宮を収縮させるはたらきがある薬「ミソプロストール」4錠を飲んだ後、経過を観察しました。
その結果、112人(93・3%)が、24時間以内に胎児を包んだ胎囊(たいのう)が体の外に出て、中絶に至りました。71人(59・2%)は治験中に有害事象(あらゆる好ましくないできごと)が起き、このうち45人(37・5%)は薬と因果関係がある副作用とされました。いずれも回復し、9割以上が軽度か中等度だった。下腹部痛(30・0%)や嘔吐(おうと)(20・8%)が多かったです。
今後、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が審査し、早ければ1年以内に承認される可能性があります。
海外では、この薬が自然流産の後の処置に使われることもありますが、国内では人工妊娠中絶が対象です。自然流産の場合は従来通りの外科的方法のみが取られます。