英製薬会社ラインファーマが開発した人工妊娠中絶のための飲み薬を巡り、厚生労働省の薬事分科会は2023年4月21日、製造販売の承認を了承しました。
国内初の経口中絶薬となり、手術と比べ身体への負担が少ない方法として選択肢が広がりそうだ。世界保健機関(WHO)は、安全だとして推奨していいます。
了承されたのは「メフィーゴパック」。2種類の薬剤からなり、妊娠の継続に必要なホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」を投与し、さらに36〜48時間後に子宮の収縮を促す「ミソプロストール」を服用する。対象は妊娠9週以下で、原則保険適用外となる見込みです。
承認の条件として、安全に使用できる体制が整うまでは当面、外来でも中絶が確認されるまで病院での待機を求めます。悪用防止のため、製薬会社と医療機関に毎月、販売量と使用量を都道府県医師会に報告してもらい、管理を徹底。会社側は医師向けの使用手引を作成し、国は国民向けの適切な情報提供に取り組みます。
中絶を希望する妊婦120人が参加した国内の臨床試験(治験)では、93%で服用後24時間以内の中絶を確認しました。下腹部痛や嘔吐(おうと)などの副作用がありましたが、多くは軽度か中程度。異常出血や細菌感染などの重いケースは4例報告されました。
厚労省によると、ミフェプリストンは1988年にフランスで初めて承認されて以降、65以上の国・地域で、ミソプロストールは2003年以降93以上の国・地域で使われています。
経口中絶薬を巡っては、専門部会が今年1月に了承後、社会的関心が高いとして意見公募を実施。上部の薬事分科会で3月下旬に再審議する予定でしたが、約1万2千件もの意見が集まり、対応の整理に時間を要するとして、審議を延期していました。
厚労省によると、21年度の国内の中絶件数は12万6174件でした。