離婚したあとの子どもの養育について検討してきた法制審議会の部会は、法改正に向けた要綱案をまとめました。離婚後も父と母双方に子どもの親権を認める「共同親権」を導入することが柱です。
親権は子どもの身の回りの世話や財産を管理する権利と義務で、現在の制度は、離婚後、父と母のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」となっています。
しかし、社会情勢の変化に対応できていないなどとして、法制審議会の家族法制部会は法改正に向けた見直しの議論を行い、要綱案をまとめました。
それによりますと、父母は婚姻関係の有無にかかわらず子どもへの責務を果たさなければならないと定めるとともに、単独親権に加えて、離婚後も父と母双方に子どもの親権を認める「共同親権」を導入するとしています。
そして、父母の協議によって共同親権か単独親権かを決め、合意できない場合は家庭裁判所が親子の関係などを考慮して親権者を定めます。
ただ、共同親権には離婚後もDV=ドメスティック・バイオレンスや子どもへの虐待が続くおそれがあるとして反対意見が根強いことも踏まえ、裁判所がDVや虐待があると認めた場合は、単独親権を維持するとしています。
さらに子どもが不利益を受けないように行政や福祉などの充実した支援や、国民の意識や考え方の変化に応じた検討を求める付帯決議もつけられました。
Point
まず、大前提となる考え方は「子どもにとって最善の利益となる」ことです。
【父母の責務を明確に】
このため大原則として、▽親権の有無にかかわらず、父と母には子どもの人格を尊重し、子どもを養育する責務があり、親と同程度の生活を維持できるように扶養しなければいけないこと
▽父と母は離婚後も含め、子どもの利益のため互いに人格を尊重して協力しないといけないことなどが明記されました。
【共同親権を新たに設ける】
「単独親権」と言われる今の制度では、父と母が離婚した場合、親権はどちらか一方が持つことになっています。要綱案ではこれを見直し、父と母の双方が持てるようにする「共同親権」を導入することでまとまりました。離婚する際、共同親権にするか、単独親権にするかは父母が協議によって決め、意見が対立する場合や協議できない場合は家庭裁判所が判断します。その際、裁判所は親同士や親子の関係などを考慮することになっていて、特にDV=ドメスティック・バイオレンスや子どもへの虐待が続くおそれがある場合、単独親権にしなければならないとされています。親権者が決まったあとでも、裁判所が子どもの利益のために必要があると認めるときは、子どもや親族からの請求で変更することが可能だとしています。
【養育費の規律も新たに】
養育費の不払いが問題となっていることから、支払いが滞った場合はほかの債権よりも優先的に財産の差し押さえができるようにする規律を設けるとしています。また、養育費の取り決めをせずに離婚した場合でも、一定額の養育費を請求できる「法定養育費制度」を設けることになりました。
【親子の面会交流は】
別居する親子が定期的に会う面会交流についても新たな試みを提案しています。調停などで話し合いが続いている途中でも、家庭裁判所が面会交流を試しに行うことを促せるようにします。親子の面会交流を早期に実現するねらいがありますが、虐待やDVのおそれがある場合などは認めないとしています。また、親だけでなく、祖父母も子どもの養育に携わる機会が増えていることから、祖父母なども面会交流を求める審判を裁判所に請求することが可能だとしました。