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発達障害とは?

発達障害は、生まれつき脳の発達に凹凸があることの総称です。

幼児のうちから症状が現れてくることが多く、対人関係やコミュニケーションに問題を抱えたり、落ち着きがなかったり、仕事や家事をうまくこなせなかったりと、人によって症状は様々です。ただ、幼児から症状が出る場合でも、本人も周りも気づかない場合も多く、その場合は大人になり顕在し、大人の発達障害として多くの問題を抱えます。

その特性などにより、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、チック障害、吃音(症)などに分類されます。中には、複数のタイプの発達障害がある人も少なくなく、ひとえに発達障害といっても、個人差が大きいことから、一人ひとりの症状に合わせた支援や治療がとても重要になります。 成長するにつれ、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、生きにくさを感じることがあるかもしれません。

ですが、発達障害はその特性を本人や家族・周囲の人がよく理解し、その人にあったやり方で日常的な暮らしや学校や職場での過ごし方を工夫することが出来れば、本来持っている通常よりも高い能力が開花する場合もあり、その才能を生かした生活をすることも出来ます。

法律の定義

発達障害の定義は、発達障害者支援法(平成17年 度施行)にあります。

・法律の中には、「自閉症、アスペルガー症候群その 他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障 害その他これに類する脳機能障害であり、その症状が通常低年齢で発現するもの」とされています。

①何らかの脳機能障害が存在していることが前提であり、保護者の育て方だけでは生じません。

② 通常低年齢に生じるものであり、成人になってから 生じることはありませんが、成人になってからその 存在に気付くことがあります。

・支援法施行令では、「脳機能の障害であって、その障害が通常低年齢に発症するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする」とされてます。

・法施行の際に出された次官通達の中では、脳機能の障害であって、その障害が通常低年齢に発症するも ののうち、ICDのF8(学習能力の特異的発達障害、広汎性発達障害など)及びF9(多動性障害、行為障害、チック障害など)に含まれるものとされてい ます。

ICDによる定義

ICD(International Classification of Diseases)は、 WHOによる国際疾病分類で、国際的に使われている医学の診断基準であり、日本国内でも使用されています。(2023年5月現在は第10版が使用されています)

ICDは診 療各科のものがあり、精神科はFコードとされています。発達障害として代表的なものには、以下のようなものが挙げられます。

F8:

  • 会話および言語の特異的発達障害(言語障害)
  • 学力の特異的発達障害(学習障害)
  • 運動機能の特異的発達障害(発達性協調運動障害)
  • 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群 など)

F9:

  • 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
  • 多動性障害(注意欠如多動性障害)
  • 素行(行為)障害(反抗挑戦性障害など)
  • 小児期に特異的に発症する情緒障害(分離不安 障害など)
  • 小児期および青年期に特異的に発症する社会的 機能の障害(選択緘黙、愛着障害など)
  • チック障害(トゥレット症候群など)
  • 小児期および青年期に特異的に発症する他の行 動および情緒の障害(吃音など)

発達障害の特徴

他の障害とされるものと比べると、発達障害にはいくつかの特徴があります。

  1. その数の多さ  
    文部科学省の統計では、通常教育及び特別支援教育を受けている児童・生徒では、盲・聾と肢体不自由を合わせたものの3倍近い知的障害を含む発達障害 児がいます。平成14年の文部科学省調査では、教育上の配慮を要する児童生徒は、通常教育に6.3%、平成24年度調査では6.5%とされました。同様に、特別支援教育に在籍する発達障害の生徒は平成14年度で 1.2%、24年度に1.4%とされており、合わせて平成 14年度で7.5%、24年度で7.9%となります。日本の人口が1億2千万人とすると約1千万人となります が、これらのうち支援を必要とするのは、これらの数分の1と考えられます。それでも他の障害と呼ばれる ものと比べて、極めて数が多いことになります。
  2. 外見からの課題の分かりにくさ
    発達障害の場合、その程度が重い場合や他の障害を 併せ持っている時は早く気付きますが、軽い場合は、 本人も周囲も気付くのが遅くなることがあります。 “外見からの課題の見えにくさ” は、一見問題ないように見える利点がある一方で、「怠けている」、「困っ たものだ」、「反抗的である」などとの誤解を受けやすく、支援の開始が遅くなることもあります。
  3. 発達障害の存在の境界は明確ではない
    発達障害が存在するか否かを明確に示すことは困難です。このことは発達障害が連続体(スペクトラム) であり、濃淡さ(グラデュエーション)があることにつながります。その程度が濃ければ気付くのも早いが、薄ければ成長するまで見逃される可能性もあります。「発達障害は存在していてはいけない」わけではなく、その存在で社会的に困難さを持つなら支援の対 象となります。発達障害者は生まれて以来特性を持っており、自分では「その状態が当たり前」としてとら えています。自分が他者と違っているという認識は持 たないまま、「要領が悪い」、「努力が足りない」など の非難を受けます。この結果として、「自分は皆と同 じように出来ない」と自信を失い、心理的に追い込ま れることもあります。
  4. 外見上は課題が改善したように見えることもある
    発達障害の経過を見ていくと、落ち着いている時期もあるし、不安定になる時期もあります。例えば、小学校で担任が交代すると落ち着かなくなることもあるし、落ち着くこともあります。社会人でも、職場が変わり、上司や同僚が変わると不安定になることもあるし、安定することもあります。置かれる環境や、対応の仕方によって、外見上の課題は大きく変化します。 つまり受け入れる側の状況により変化する側面を持っています。
  5. 家族的背景を持つことがある
    最近欧米を中心に発達障害の遺伝的背景が指摘されています。ADHDを例にとれば、精神疾患の代表である統合失調症やてんかんよりも罹患者は多いのではな いかと考えられています。このことは、一人発達障害がいれば、その兄弟姉妹、両親、祖父母にも発達障害 存在の可能性があるということです。家族の発達障害 への理解が不十分であっても、「自分と似ており問題 はない」と考えていれば、家族を責めても仕方はありません。臨床場面でも、保護者に発達障害が存在していると、子供の発達障害の存在に気付くのが遅くなります。
  6. 幾つかの発達障害が同時に存在していることは珍 しくない
    発達障害は、一つが単独で存在するのではなく、 程度の差はあっても、多くは重複して存在します。 ASDの症状で来院されても、ADHD、LDなどが重なっていることは珍しくありません。知的障害、発達 性協調運動障害、チック障害などが併存していること もあります。もちろん、発達障害以外の二次的な障害 が併発していることもあります。一人一人の発達障害 者はこれらが重なり合った存在であり、特定の特性や 疾患にのみ結びつけるのは難しいことも多いです。

生まれつきの特性で、「病気」とは異なります

発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。

これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。同じ人に、いくつかのタイプの発達障害があることも珍しくなく、そのため、同じ障害がある人同士でもまったく似ていないように見えることがあります。個人差がとても大きいという点が、「発達障害」の特徴といえるかもしれません。

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。

症状の強さに従って、いくつかの診断名に分類されますが、本質的には同じ1つの障害単位だと考えられています(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。典型的には、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏り(こだわり)の3つの特徴が現れます。

自閉症スペクトラム障害の人は、最近では約100人に1〜2人存在すると報告されています。男性は女性より数倍多く、一家族に何人か存在することもあります。

注意欠如・多動性障害(AD/HD)とは

発達年齢に見合わない多動‐衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3〜7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。

学習障害(LD)とは

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみがとりわけ難しい状態をいいます。有病率は、確認の方法にもよりますが2〜10%と見積もられており、読みの困難については、男性が女性より数倍多いと報告されています。

二次障害について

発達障害のある人たちは、その特性について周囲に正しく理解されず不適切な対応を受けることがあります。

否定的な評価や叱責を受けた場合、自尊心が低下したり否定的な自己イメージを持つようになり、その 結果、二次障害と呼ばれる状態を呈することがあります。二次障害は発達障害の本来的な特性が強く表れたり、併存して他の症状や疾患が生じたりします。

発達障害の本来的な特性が強く表われる例としては、自閉症の方であればこだわりやパニック、ADHD の方であれば不注意や衝動性などが著しくなり、日常 生活や社会生活に強い支障をきたすようになります。併存して他の症状や疾患を生じる例としては、反抗や暴力、反社会的な行動、反抗挑戦性障害などの素行 (行為)障害に至る場合があります。

また、心身症として身体的な問題が現れる場合や、不安や気分の落ち込みの症状、強迫症状、対人恐怖などを呈し、引きこ もりに至る場合もあります。

二次障害を防ぐためには、発達障害について周囲が 正しく理解し、それぞれの人に合った環境を整え、適切な対応をしていくことが重要です。

発達障害と依存症

近年、嗜癖や依存の背景に発達障害の存在が注目されています。

子どもの場合は、インターネットやゲームへの依存が話題になっています。不登 校になり自宅でゲームをして、1日中テレビを見ており、生活リズムが乱れていることも珍しくありません。成人の場合は、インターネットやゲー ムに加え、ギャンブル(パチンコ、競馬など)、買い物、アルコール、薬物などへの嗜癖・依存の背景にも発達障害が存在しているとの報告もあります。

サラ金からお金を借り、仕事をさぼってパチン コに打ち込んでいるため、配偶者から離婚を迫られていた男性が、背景にあるADHDを治療するこ とにより、パチンコから離脱できた例があります。アルコール嗜癖で悩んでいる男性に、ADHD 治療薬を使用することで、背後のADHDが改善して、アルコール嗜癖が良くなった例もあります。この分野が着目されるようになったのは、最近のことでまだまだ未解明の部分がありますが、いくつかの考え方があります。

ASDで言えば、特定のものごとへ執着、こだわりの延長上に嗜癖や依存が存在していると考えられています。ADHD では報酬系の弱さが指摘されています。「目の前 の小さな報酬(依存対象)に飛びつき、背後の大きな報酬(本来の対象)を得ることが難しい」と考えられています。発達障害として括れば、現状がうまく行ってないことに起因する自己不全感が嗜癖や依存を促進している可能性があります。ASDの本来の症状治療薬は認可されていませんが、ADHD治療薬は2種類認可され使用されています。アルコール嗜癖、二次的症状(うつ症 状など)などで精神科クリニックを受診する人の中に、根底にある発達障害の治療により改善される例の報告が出始めています。これらの方々の場合、アルコールやうつ症状の治療をしても、十分な改善が見られないのが特徴です。しかし、発達 障害に詳しくない医師の場合、受診してもその存 在を見逃してしまうこともあります。自分の年少時を思い出したり、その頃のことをよく知っている家人らに確かめたりして、発達障害の存在が考えられる場合は、専門医を受診することで改善に結びつく場合があります。

発達障害と嗜癖、依存などの関係については、まだ未解明な点も多くありますが、何かに極度に依存が見られる方は、発達障害を一度疑がい、診断をしたほうが良いかもしれません。

こちらのページは、東京都福祉保健局の下記ページを参照している部分もございます。詳細確認したい方は下記ページもご確認下さい。

https://www.fukushihoken.metro.

tokyo.lg.jp/shougai/shougai

_shisaku/hattatsushougai.html