一人親(ひとりおや)とは、母親または父親の片方いずれかで、その子(児童)を育てている人を指す言葉である。その他には、一人親家庭や単親世帯(たんしんせたい)ともいう。
このうち、母と児童の家庭を母子世帯(ぼしせたい)あるいは母子家庭(ぼしかてい)、父と児童の家庭を父子世帯(ふしせたい)あるいは父子家庭(ふしかてい)という。また、そのような家庭の親は、母親の場合はシングルマザー(英: single mother、略称:シンママ)、父親の場合はシングルファーザー(英: single father)と称される。なお、厚生労働省の定義では、母子・父子以外の同居者がいる場合も母子家庭・父子家庭に含める。
子供のいる世帯は徐々に減少しているが,ひとり親世帯は平成5(1993)年から平成15(2003)年までの10年間に94.7万世帯から139.9万世帯へと約5割増加した後,ほぼ同水準で推移している。厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」によると,平成28(2016)年は,ひとり親家庭数141.9万世帯のうち,母子世帯数は123.2万世帯,父子世帯数は18.7万世帯となっており,ひとり親世帯の86.8%が母子世帯である(I-5-9図)。
一方で,厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成28年) によると, 母子世帯のうち37.6%が年間所得額200万円未満であり,45.1%が生活を「大変苦しい」と感じている。
ひとり親世帯で子供が安定した生活環境を享受するためには,養育費の確保が重要であるが,平成28(2016)年に離婚相手から実際に養育費を受け取っているのは,母子世帯で24.3%,父子世帯で3.2%にとどまっている(I-5-10図)。
I-5-10図 母子世帯及び父子世帯における養育費の受給状況(平成28(2016)年)
※上記図は、男女共同参画局のデータを使用しており、男女共同参画局のWebページに飛びます。
ひとり親世帯になった理由は、母子家庭・父子家庭ともに「離婚」が8割弱を占める[1]。残りの2割の大半は、父子家庭が「死別」、母子家庭が「死別」と「未婚」で半々となっている。
その他の原因としては、以下のような理由が挙げられる。なお、父母のいずれかが単身赴任等の理由により「生活拠点が一時的に、家庭とは別に置かれている場合」は含まれない。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査[6]によれば、ひとり親家庭のうち、厚生労働省公表の貧困線を下回った世帯の割合は、母子家庭で51.4%、父子家庭で22.9%であり、二人親家庭の5.9%に比べて大きな差がある。さらに、可処分所得が貧困線の50%に満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が 13.3%、父子世帯が 8.6%、ふたり親世帯が0.5%となっている。また、母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。
「有子世帯の所得格差は、過去15年間で拡大傾向にあり、とくに独立母子/父子世帯内部で所得格差が大きい」「高学歴化によりひとり親の教育水準が急速に向上したものの、ひとり親世帯の低学歴層への偏りは安定的に維持されている」「要因分解法の推定結果より、世帯所得の学歴間格差が独立ひとり親世帯の所得格差の拡大に寄与しているが、他の成人親族との同居はひとり親世帯の階層差を緩衝させる役割を持っていた」とする分析があり、ひとり親家庭の貧困は親の性別や学歴、同居形態によって実態が異なる。
厚生労働省は「子ども虐待対応の手引き」において、未婚を含むひとり親家庭を児童虐待のリスク要因の1つとしてあげている。とある保育園に通う児童虐待や虐待が疑われる家庭の半数以上がひとり親家庭であるとする調査や、育児放棄が低出生体重児のいる家庭やひとり親家庭で発生する確率が比較的高いとする考察などがある。
ひとり親の貧困は貧困の悪循環に陥る危険があり、行政支援をはじめとした公的支援のほか、子ども食堂や無料塾の開催などの民間支援も行われている。
ひとり親家庭には地方自治体が主体となって育児、医療等に対し助成金などの種々の支援が行われている。また就業支援や職業訓練などの各施策が行なわれている。また、ひとり親家庭だけを対象としたものではないが、経済的に窮乏状態(=貧困)の家庭に対しては生活保護や就業相談、子育ての相談窓口などを設けている。さらに行政機関ではないものの、母子寡婦福祉連合会が行政機関と連絡をとって支援を行っている。一方で、偽装離婚、事実婚、パートナーがいる者が不正受給や優遇措置を受けることが問題になる場合もある。なお、生活保護を受給している母子世帯及び父子世帯はともに約1割である。
ひとり親家庭のために様々な制度が行政により設けられている。