うつ病の人に「頑張れ!」と言ってはいけないという説は本当なのでしょうか?(写真:taa/PIXTA)
昔から「うつ病の人に頑張れと言ってはいけない」という説があります。しかし、専門家によれば、必ずしもそうとは言い切れないようです。その理由を、「金スマ」「世界一受けたい授業」にも出演した、精神科医の岩波明氏が解説します。
まず、「うつ状態」と「うつ病」を区別することが重要です。「うつ状態」だからといって、必ずしも「うつ病」とはいえないという点を押さえておきましょう。
うつ状態において、悲しい気持ち、不安な気持ちになることは、人間にとって自然で健康的な感情の動きで、誰もが経験するものです。仕事や学業で失敗したとき、恋人と別れたときに憂鬱な感情に見舞われるのは、無理もないことです。そのため、同じうつ状態でも、うつ病と診断すべきときと、人間として正常な反応として見るべきときが混在しています。
その2つを分けるものは、1つは「うつ状態」の持続期間です。この際、「うつ病」と診断されるのは、うつ状態が2週間以上、時には数カ月という長期にわたり継続するケースです。一過性のうつ状態は、うつ病とは診断されません。
目次
症状に目を向けるなら、一般的にうつ病というのはシンプルな疾患です。うつ病の症状としては、大きく次の3つの症状を覚えておくとよいでしょう。1つひとつは、誰でも少なからず経験したことがあるはずです。
1つめの症状は「抑うつ」です。うつ病のイメージとして、最も一般的なものがこれでしょう。明らかな原因がある場合もあれば、原因がはっきりしないこともありますが、重苦しく、暗い気持ちになります。悲しくなり、楽しい、明るい感情が起きなくなります。抑うつがひどくなると、不安やイライラが募ることもあります。時には、自殺を考えるようになります。
2つめの症状は「抑制」です。これは思考や行動における「意欲の低下」を指しています。例えば、判断がつかない、思考が滞る、集中できないというものです。とくに「決められない、判断ができない」という患者が多いようです。また行動面では、仕事でもプライベートでも、何をするにもおっくうになる、根気がなくなる、といった症状として表れます。好きな趣味の活動にも興味がなくなり、引きこもりに近い状態になることもあります。
3つめの症状が「身体的な症状」です。中でも、睡眠障害と食欲不振が目立ちます。睡眠障害は、寝つきが悪い(入眠障害)、眠りが浅い(熟眠障害)、深夜や早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)などの組み合わせで表れます。
そのほか、食欲不振や、それに伴う全身のだるさも、多く見られます。ただし、一部のうつ病患者は過眠、過食を示すこともあります。
巷では「うつ病の人に頑張れと言ってはいけない」とよくいわれています。これは正しいともいえるし、正しくないともいえます。うつ病の人に接するときのマニュアルのようにして「頑張れと言ってはいけない」と覚えている人が多いようですが、必ずしもそうとはいえません。
うつ病は、職場で最も多く見られる精神疾患です。また憂鬱さ、不安、不眠といった症状は、誰もが少なからず経験しています。そのため、一見わかりやすい病気であり、そのせいで素人判断の危険にもさらされています。
しかし、一口にうつ病といっても、その症状は多様です。日常生活に影響が少ない軽症なものもあれば、自殺のリスクが高かったり、食欲不振で栄養状態が悪化していたりと、入院が必要なほど重篤なものもあります。そうした状態に合わせたアドバイスやケアが必要となります。
症状が重いときは、頑張るよりも、休養と治療が先決です。「頑張れ」とは言わないほうがいいでしょう。実際、「頑張りたくても、頑張れない」のがうつ病です。本人が怠けているわけではありません。
ただでさえ、頑張れない自分を責めている状態にある患者を、「頑張れ」という言葉がさらに追い詰めることになります。同じように「元気出して」「病は気からと言うし、気の持ちようだよ」といった言葉も、不適切です。
しかし、軽いうつ病の場合は対応が異なります。治療を進め回復に向かっていく過程で、頑張らなければならないときも出てきます。ほぼ寛解した状態にある人はもちろんのことですが、その途中にある人も、目標を定めて頑張らないといけないことがあるのです。
休職からの社会復帰を目指すのであれば、少しずつ復帰に向けたリハビリ(リワーク)を進めることが重要になります。このような時期においては、多少気分が乗らなくても、頑張る必要があるでしょう。
私も、職場への社会復帰を目指している人に「図書館で半日以上過ごしてみましょう」などと指導することがあります。そのためには、休養優先でルーズになっていた生活習慣を改め、自分を律し、しかるべき時間に起床して身支度を整え、出かけないといけません。
これは健康な方なら難なくこなせることですが、うつ病によるブランクが長いと、これだけのことでも難しいのです。それでも、回復を目指すならば、本人なりの努力がどうしても必要になります。また軽症のうつ病なら、行動し動くことで、さらに改善することもあるのです。
前の項目で述べた「頑張れと言ってはいけない」という言葉が、金科玉条のように広まったのは、時代的な背景があったのかもしれません。
以前は、社会的にうつ病の理解はなかなか進んでいませんでした。そのために「うつ病なのにそう認識されない人」が数多く存在していました。仕事をしていてもはかどらない、元気がない。しかし、周りは病気のせいだとは思いもよらないのです。だから悪気なく「もっと頑張れ」という言葉を口にしてしまい、それがうつ病患者を追い詰め、無理をさせていました。
その後、うつ病が社会的にクローズアップされるようになり、「頑張れと言ってはいけない」がわかりやすかったこともあり、一般に広く伝わったと考えられます。
前述のとおり、うつ病の回復状態によっては、「頑張れ」と患者の背中を押してあげたほうが、より回復が進みます。例えば「ここまでできないと、次の段階には進めませんよ」と示してあげることは重要です。
とはいえ、無理は禁物です。「ここまでなら、無理なく頑張れるだろう」という一線を、医師は見極めなければなりません。不安感や憂鬱感がどの程度かも重要です。さらに、注意しなければならないのは、「抑制」の症状です。
抑制とは、「頭が働かない、判断力が鈍る、根気がない」といった症状です。憂鬱さは「なんとなく元気がなさそう」「表情が暗い」といった形でわかりやすいですが、抑制の症状は表に表れにくいのです。『うつと発達障害』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)
抑制の症状がどれだけ回復しているのか、慎重に様子をうかがう必要があります。回復しているように見えても、実はまだ集中力が回復していないため、仕事に必要な文書をしっかり読むことができないケースもあるのです。
治療においては、うつ病からの復職を受け入れる側との連携も必要になります。
上司がすべてを把握することは難しいと思いますが、環境が整っている会社であれば、人事部や産業医、あるいは保健管理センターなどが復職や復帰の仕方について対応してくれるでしょう。本人、病院、職場が連携しながら、復職を目指していくのが理想です。
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— ㈱Prevision-Consulting (@previsioninfo) February 21, 2024
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