精子がない病気などで不妊のカップルに対しては、第三者から提供された精子を使った不妊治療が行われています。この治療を安全に進めようと、獨協医科大学の医師らが6月、国内初となる精子バンクを立ち上げ、提供者を募集することになりました。
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第三者から提供された精子を使って人工授精する不妊治療は、無精子症などで不妊のカップルを対象に日本産科婦人科学会の登録施設で、3年前の段階で1年間におよそ3400件行われ130人の赤ちゃんが生まれています。
しかし、近年、精子の提供者が減少し、患者の受け入れを停止している施設も多く、SNSなどで知り合った個人から精子を購入するケースもあることから、男性の不妊治療を行っている獨協医科大学の専門医などが安全に治療できるよう、6月、国内では初めて第三者からの精子を保存する精子バンクを立ち上げ、提供者を募集することになりました。
募集は、20歳から40歳までの治療に理解のある国内の医療関係者などに限定し、感染症の検査を行ったうえで妊娠する確率が高いとみられる精子を選んで、治療施設に送るとしています。
また、精子の提供者が自身の情報を治療を受けるカップルに開示するかどうか選択できるようにして、生まれた子どもが「出自を知る権利」にも配慮したいとしています。
バンクを設立する岡田弘特任教授は「SNSなどで取り引きするケースが急増しているとみられるが、感染症の検査が行われていないなど問題が多い。バンクを作ることで適切な治療を受けられる患者を増やしたい」と話していて、年間500件の提供を目指すとしています。
第三者から提供された精子を使った不妊治療は「提供精子を用いた人工授精」の英語の頭文字をとって「AID(エー・アイ・ディー)」と呼ばれ、病気で精子がないなどの理由で不妊の夫婦を対象に、日本産科婦人科学会の登録施設で行われています。
これまで、この手法で国内で分かっているだけで1万人を超える赤ちゃんが生まれたと見られていて、3年前には1年間に1100組余りのカップルを対象に、およそ3400件実施され、130人の赤ちゃんが生まれています。
日本産科婦人科学会の見解では、精子の提供者に関する情報はプライバシーを守るため、匿名とするというルールになっていますが、生まれた子どもが、提供者の情報を知る「出自を知る権利」を求める声が近年高まっています。
こうしたこともあって近年、精子の提供者が減少していて、国内各地に12か所あるこの治療を行う学会の登録施設のうち、少なくとも6施設は新規の患者の受け入れを停止しているとしています。
インターネットのウェブサイトやSNSでは、医療機関を介さない形で個人どうしでの精子の受け渡しが行われていると指摘されていて、ツイッターでは「妊活のお手伝いします」「無償で精子提供しています」などといった書き込みも見られます。
日本語で精子提供をうたうウェブサイトやブログは少なくとも140あり、このうちのおよそ92%で感染症の検査を行っているかどうかについての情報や提供することについての同意や契約の書類などについての記載がなく、提供を受ける人に対する情報提供が不十分となります。
こうした精子の受け渡しについて日本生殖医学会の常任理事で埼玉医科大学の石原理教授は「個人間の精子の受け渡しは、精子がない病気などで不妊のカップルだけでなく、登録施設での不妊治療の対象から除外されている独身女性や性的マイノリティーの人たちも行っているとみられる。誰の精子なのか、提供者からの情報を信頼するしかないうえ、治療に用いる凍結された精子とは異なり、感染症の検査も行われていないため、安全性の問題がある。こうしたケースも含め、公的な管理システムが必要ではないか」と話しています。
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