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「双子の妊娠・子育て」の決して甘くない現実 50年で割合が2倍になったのに情報が少ない

双子の育児
多胎児に関する情報は単胎児に比べると不足している(筆者撮影)

一昔前と比べて、街中で双子の子どもを目にする機会が増えたと感じている人もいるだろう。厚生労働省の統計によると、子どもの中で双子が占める割合は50年前に1%ぐらいだったが、今は2%程度と、この半世紀で約2倍に増加している。

双子が増加した背景にあるのは不妊治療だ。日本では1983年に体外受精が始まり、一気に多胎児の数が増加した。2008年に日本産科婦人科学会が移植する受精卵の数に制限を設けたことにより、その数は減少。しかし再び増加傾向になり、ここ数年は横ばいになっている。

妊娠の種類別に見たグラフ

出生率が低下する一方、多胎児の数は一定数を保っている

日本の出生率が低下する一方、多胎児の数は一定数を保っていることから子どもに占める多胎児の割合が増加傾向にあることは明らかだ。不妊治療により増加するのは主として受精卵を2個、子宮に移植する二卵性の双子で、多胎出生の約4割は不妊治療によるとされている。

一卵性はその名のごとく同じ遺伝子をもって生まれるため、顔が瓜二つの場合が多い。お笑い芸人のザ・たっちや女優のマナカナこと三倉茉奈さん・佳奈さんなど、一卵性双子で有名なタレントだ。一方の二卵性は2つの受精卵から生まれるため、まったく違う遺伝子となっている。同時に生まれる兄弟といったところだろうか。タレントではローラさんや安田美沙子さんも二卵性の双子であり、ともに異性の兄弟がいる。

一方で、双子のような多胎児が誕生する際には、単胎児とはいろんな事情が違う。そこが以外と知られていない。

全国的な多胎の組織である日本多胎支援協会(JAMBA)の理事であり、多胎に関する研究が専門の石川県立看護大学の大木秀一教授は言う。

「多胎は妊娠、出産、育児を通し、さまざまな困難が立ちはだかります。多胎児の6割弱が早産児、7割強が低出生体重児です。

死産率・周産期死亡率・乳児死亡率はいずれも近年大幅に低下していますが、単胎児と比較すると依然2~5倍程度、脳性麻痺は5~10倍高い。ほかにもコミュニケーション能力の遅れ、学習障害、言語発達の遅れ、注意欠陥多動性障害が多いという報告も多くあります。正常範囲内の成長や発達も遅れる傾向にあります」

海外では多胎のリスクを取り扱う場合、「慎重になるように」という趣旨のガイドラインを出している国もある。しかし、日本ではまだまだ多胎妊娠の妊婦のメンタルをフォローする環境が整っていない。産科医の対応もまちまちで、リスクをちゃんと説明するケースもあれば、かえってリスクをリスクと思わせないように話をする場合もあるようだ。

実際に患った妊婦でなければ知らないリスク

実は筆者である私自身、妊娠中にトラブルに見舞われたひとりだ。私のケースは一卵性特有の疾病である双胎間輸血症候群(以下、TTTS)を起こし、片方の子どもが脳性マヒになった。TTTSとは一方の胎児に羊水や血流が流れる胎盤のトラブルで、原因は突き止められておらず予防することができない。一卵性双子であればいちばんのリスクであることが知られているが、TTTSになる妊婦は1割であるため、実際に患った妊婦でなければ双子の母親であっても知る人は少数だ。

私と同じくTTTSを経験した兵庫県在住の三谷圭子さん(30代、仮名)も、双子のうち1人を亡くし、生まれた1人にも障害が残った。

三谷さんが30週目の検診の際、産科医が長めにエコーをするので、「どうしたんだろうって不思議に思った瞬間、医者に申し訳なさそうに『残念ながら、ひとりの赤ちゃんの心拍が止まっています』と言われました。最初は何のことだかわからず戸惑っていると、医者が続けて『今すぐ出してあげなければもう1人の子どもの命も危ない。これから帝王切開します』と、心の準備も何ないまま夫や家族に連絡するように促され、泣きながら電話したことを今でも鮮明に覚えています」。

三谷さんはこう続ける。

「本当につらかったのはそのあとです。未熟児で生まれてしまったため、しばらくの間子どもはNICU(新生児集中治療室)にいました。その後、退院前のMRIで脳に障害があることがわかりました。今年3歳になりますが、いまだに歩くことはおろか、お座りも厳しい状況です。しかし時間とともに子どものことを受け止めることができ、今は残された子どもの笑顔が癒やしでどうにか頑張れています」

また二卵性であっても、早産のリスクは高いことに変わりはない。二卵性の双子を出産した東京都の山下加奈さん(30代、仮名)が言う。

「切迫早産で管理入院していたのですが、27週のときに緊急帝王切開で生まれました。ともに1000gに満たない超未熟児でした。命はどうにか助けてもらいましたが、片方の子どもに障害が残りました。現在4歳ですが、将来的に実用的な歩行は厳しく、車いすの生活になるだろうと思っています。3歳までは、どうにかなるだろうと楽観的にとらえていましたが、やはり実用的な歩行が厳しいことが現実になるとつらいですね。将来はもう1人の子どもと同じ学校に行けるかどうかもまだわかりません。久しぶりに、子どもがNICUに入院中に障害の告知されたことを思い出しました。同じような人生を送らせてやれなかったことが今でも悔やまれます」

大阪府在住の大野さやかさん(40代、仮名)のケースは、出産自体にトラブルがなかったが、成長していくにつれて2人の差が開いていった。

「ほかの兄弟に比べると、そもそも双子なので2人とも身体的にも精神的にも成長が遅かったです。歩き出したのは1歳半。言葉は2歳超えても出ませんでした。ようやく1人が3歳になる直前にしゃべりだしたのですが、もう1人は一向にしゃべる気配がない。最初は個性の範囲だと思っていたのですが、日に日にそれが発達遅滞の範囲になり、結局3歳のときに片方の子どもは広汎性発達障害の認定を受けました。今5歳になりますが、2人に圧倒的な差が出てきてしまい正直戸惑っています。1人の成長を喜びつつも、もう1人の遅れに現実を突きつけられ落ち込んでいます」

育児破綻・児童虐待の予備軍は多い

妊娠・出産だけではなく、育児についても困難は伴う。1人を育て上げるだけでも相当な労力が必要とされるわけだが、それが2倍以上になるのだから、多胎育児の身体的・精神的な負担は計り知れない。前出の大木教授が言う。

「多胎児家庭は身体的・精神的・社会的負担が複合的であり、それに伴う育児不安、育児困難、児童虐待、抑うつなどさまざまな課題が挙がっています。母子手帳が主に単胎児を念頭に作られているように、多胎児に関する情報は単胎児に比べると不足しています。その結果、不妊治療、妊娠の段階から精神的ストレス、育児上のリスクを高めます。多くの母親が自身の育児において虐待に近い体験を語っており、育児破綻や児童虐待は決して一部の例外ではなく潜在的な予備軍はかなり多いと考えています」

多胎育児の身体的・精神的な負担は計り知れない(筆者撮影)

実際に私もこのままでは虐待をしてしまうと、児童相談所に電話をしそうになったことがある。多胎の母親であれば誰しも一度は、この感情を抱いてしまうのではないだろうかと個人的に思う。

取材で集まった双子を持つ母親の体験談をいくつか紹介しよう。

「双子育児がつらすぎて、一時期は泣いてばかりいました。2人同時に風邪を引いたときなんて最悪で、ごはんが食べられないから泣く、眠たいのにしんどくて寝られないから泣く。1人なら抱っこして集中的に見てあげることができますが、2人だと同時に抱っこするわけにもいかず、1人を抱っこしては降ろして、1人を抱っこしては降ろしての繰り返し。降ろすと泣くので、2人とも永遠に泣いている。

もうその時はお手上げ状態で、私も2人と一緒にずっと泣いていました。それを見かねた夫が保育園に入れてくれる手配をしてくれ、それで心が楽になりました。やはり離れる時間は大切で、今まで2人がストレスだったのが、離れたことによってようやくかわいいと思えるようになりました」(静岡県在住・児玉由衣さん・30代、仮名)

「担当の保健師さんにいくら双子育児がつらいといっても、やはり経験がないのでわかってもらえません。ファミリーサポートなど地域の方々が助けてくれるシステムもありますが、双子なので料金も倍かかり、家計が厳しく預けることもためらわれます。保育園も働いてないので厳しいですし、親も遠方のため助けを求めることもできないのが現状です」(愛知県在住・野田明子さん・30代、仮名)

「双子と年子ではまったく育児に対するストレスが違います。すべてが同時。どちらかが待てるだけでも、まったく大変さが違います。こちらが言うことがある程度理解できるまでは、休む暇がなかったですね。双子サークルにも当初は参加していましたが、子ども2人を連れだすだけでも一苦労なので、足が遠のきました。家から出て自転車や車に乗せるのも1人より倍の労力と時間がかかるわけです。

買い物も大変です。歩く前だとベビーカーは大きくて邪魔ですし、歩くとなると2人を見ながら余裕のある買い物なんてできない。電車に乗ったときは周囲にベビーカーで嫌な顔をされ、2人して騒ぐのでまた嫌な顔をされ、最後は2人してぐずるので収拾がつかなくなり、途中下車してタクシーで帰ってきました。視線が痛いっていうことを考える余裕がないほど、2人の子どもを同時に見るのは大変です」(大阪府在住・生田彩さん・20代、仮名)

情報格差をなくすには

「多胎支援は25年くらい前から国が力を入れていますが、いまだに何も変わっていません」と大木教授は指摘する。

一時は厚生労働省(旧厚生省)からも双子専門の冊子が発行されたが、定着せずに終わった。保健医療の専門家は多胎に対する関心が低く、また、多胎に関する専門的な知識を得る機会が少ないので自信をもって保健指導ができない。

最近は多胎専門の冊子を母子手帳と一緒に渡したり、地域の多胎サークルに力を入れたりしている自治体もあるが、まだまだ少数派だ。そうなるといちばんの情報源は母親同士。ただ、就労している母親はママ友サークルにも参加できないため、情報格差が起こることになる。

多胎児家庭が持つ多くの課題を解決するためには、地域において当事者を中心に行政、民間、教育、研究の専門職が連携し、議論や情報交換を進める必要がある。


以上ですが、如何でしたでしょうか?
今回は発達障害と直接の関係はないですが、気になるニュースだったので取り上げました。今後は社会面の充実も図っていきます。

私の知り合いにも、双子を授かった方がいるのですが、その方は本当に大変だったと言っていました。まずは長男がいて、そこに二人目をと思ったら、妊娠してある程度経ってから双子だと分かり、大慌てだったそうです。また、長男とそこまで年も離れていないので、あまりに忙しすぎて育児ができず、双子の一人は親戚にある程度の年齢まで育ててもらっていたと言っていました。そこは親戚や家族と家が近かったので、なんとかなりましたが、普通一人で2人も3人も面倒見れないですよね。。。

というわけで、双子の育児の大変さを物語る内容でした。
育児や子育ては本当に大変だし、外出時や電車内など、お母さんなは色々と気を使っていますので、見かけたらなるべく優しく出来るように心がけたいものですね。


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