同性どうしの結婚が認められていないのは憲法に違反するとして、東京に住む同性のカップルなどが国に賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は「同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた憲法に違反する状態だ」と指摘しました。一方で、「法制度の構築は立法の裁量に委ねられている」として、憲法には違反しないと結論づけ、訴えを退けました。
3件目となった東京地裁は憲法に違反しない「合憲」の結論でしたが、大阪に比べ踏み込んだ判断となりました。
同様の集団訴訟は全国5か所で起こされていて、先行して出された判決は札幌地裁は「憲法違反」、大阪地裁は「合憲」と判断が分かれていました。
東京に住む同性のカップルなど8人は、同性どうしの結婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反するとして、国に賠償を求めました。
2022年11月30日の判決で、東京地方裁判所の池原桃子裁判長は、「婚姻によってパートナーと家族になり、法的な保護を受ける利益は個人の尊厳に関わる重要な利益で、男女の夫婦と変わらない生活を送る同性カップルにとっても同様だ」と述べました。
そのうえで、「同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、同性愛の人に対する重大な障害であり、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた憲法に違反する状態だ」と指摘しました。
一方で、「どのような法制度にするかは、国の伝統や国民感情を含めた社会状況を踏まえつつ、十分に議論されるべきで、国会の裁量に委ねられている」として、今の法律の規定が憲法に違反するとまでは言い切れないと判断しました。
婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法にも違反しないとして、訴えを退けました。
同性婚をめぐっては、2001年に世界で初めてオランダで合法化されて以降、ヨーロッパを中心に認める動きが進んでいます。
アメリカでは、2015年に連邦最高裁判所が、すべての州で同性婚を認める判断を示し、アジアでは唯一、台湾で3年前から認められています。
こうした中、日本でも同性カップルの権利を認めてほしいという声が高まり、取り巻く環境は徐々に変化しています。
2015年には、性的マイノリティーの人が暮らしやすい社会づくりを進めようと、同性カップルを、“結婚に相当する関係”とみなして、自治体が証明書などを交付するパートナーシップ制度が、全国で初めて東京 渋谷区と世田谷区で導入されました。
11月1日には、東京都も同様の制度を開始し、証明書があれば、
▽都営住宅にカップルで申し込めるなどの行政サービスが受けられるほか、
▽一部の企業では、住宅購入の際に共同でローンを組んだり、携帯電話の家族割引が適用されたりするなど、配偶者を対象にしたサービスが受けられるということです。
パートナーシップ制度は全国的に広がりを見せていて、同性婚の実現に取り組む団体「マリッジ フォーオールジャパン」によりますと、11月1日現在で、全国の240を超える自治体で導入されています。
しかし、法的な効力はないため、結婚している夫婦とは違って税金の配偶者控除が受けられなかったり、健康保険で被扶養者として認められなかったりするほか、パートナーに子どもがいる場合、その親権者になることもできません。
裁判で原告側は、「パートナーシップ制度と法律で認められた結婚は、異なるものだ」と訴えていました。